幸せの国ブータンで起きている異常事態!オーストラリアに出稼ぎに行くブータン人たち。
ブータンに住み始めて1か月。
この間に何人ものブータン人から同じセリフを聞いています。
オーストラリアに行こうと思ってるんだ
今、「世界一幸せな国」として有名なブータンで、人々が国外に流出し続けているという異常事態が起こっています。
そこで、今回は「オーストラリアへ出稼ぎに行く、幸せの国ブータンの人々」について解説していきます。
クリックできる目次
かつて世界一幸せといわれた国・ブータン
ブータンと聞くと「幸せの国」と連想する人も多いでしょう。
ブータンはGDP(国内総生産)で測る「経済的な豊かさ」ではなく、GNH(国民総幸福量)で測る「国民が幸せであるかどうか」を重視しています。
つまり、ブータンは経済的な発展よりも、国民の幸せを優先しているということです。
このGNHが高いことから、ブータンは「世界で一番幸せな国」と呼ばれるようになりました。
ブータンでは病院が無料で、学校も大学まで無償。
このあたりも、ブータンが国として国民の幸福に重きを置いていることがうかがえます。
さらにいえば、ブータン人にとっての幸せは、多くの人が感じる幸せとは少し異なります。
ブータン人は家族や友人などの自分の周りの人たちが幸せであるから、自分も幸せであると感じるそうです。
他の人と比べて自分が優位に立っているかどうかで感じる幸せとは異なりますね。
しかし、それも1999年にテレビとインターネットが導入される前の話。
インターネットの普及によって世界を知るようになったブータン人は、外の世界と自分たちとを比べ始めたのです。
その結果、国が重視している幸福度も下がってきているといわれています。
実際に、ブータンでは人口の国外流出が続いています。
ブータン人はオーストラリアに出稼ぎに行く!
国外へ出ていくブータン人の主な行き先はオーストラリア。
そして、彼らがオーストラリアを行き先に選ぶ理由は給与の高さにあります。
オーストラリアのFair work ombudsmanによると2023/2024年度の全国最低賃金は時給23.23オーストラリア・ドル(約2,230円)、週給882.80ドル(約83,500円)となっています。
一方、ブータンの平均月収は現地の人たちの話によるとおよそ15,000ニュルタム(約26,000円)。
オーストリアで12時間働くだけで、ブータンの平均月収を超えてしまう計算になります。
この給与水準の差を見るだけでも、出稼ぎに行きたいブータン人が多い理由がわかるでしょう。
現地での仕事によっては、ブータンで1か月働いてやっと手にする金額を、オーストラリアでは1日で稼げてしまうのです。
また、ブータンではゾンカ語のほかに英語も公用語であるため、オーストラリアに行っても言葉の壁という問題は存在しません。
この点もオーストラリアが選ばれる理由であると考えられます。
このブータンからオーストラリアへ出稼ぎに行く流れは5年ほど前から始まり、3年前くらいから急速に増えているそうです。
ブータン人はオーストラリアでどんな仕事をしている?
ブータン人はオーストラリアでどんな仕事をしているの?
清掃の仕事や土木作業、建設現場、荷物整理なんかの仕事をしているブータン人が多いよ
彼らは清掃の仕事や荷物整理などの仕事をしたくてオーストラリアに行くわけではありませんが、みんなお金のために我慢して仕事をしているといいます。
現在、ティンプーでは建設ラッシュが起きていますが、建設現場で肉体労働に従事しているのはほとんどがインドからの出稼ぎ労働者たち。
ブータン人は肉体労働をあまり好まないからです。
そんな彼らが我慢してまでオーストラリアで仕事をするのは、やはりお金のためなのでしょう。
オーストラリアで3年働けばブータンで家が建つ?
オーストラリアで3年働けばブータンで家が建てられるよ
オーストラリアで5年働けばブータンで一生働かずに暮らしていけるよ
これらはブータン人から実際に聞いた話です。
ブータンで普通に働いていても一生家は建てられませんが、オーストラリアで3年働けば家が建てられます。
ブータンの若者たちがオーストラリアに行きたがることに納得できます。
実際に首都ティンプーで生活してみると物価はそれほど安いわけではなく、平均月収から考えると生活に余裕がないとわかるからです。
また、ブータン人の話を聞いていると、将来に希望を持てない若者だけがオーストラリア行きを望んでいるというわけではありません。
多くの医師や公務員なども高待遇を求めてオーストラリアへ移住しているそうです。
私が聞いた話では、あるブータン人の男性は国内でしっかりとした職に就いていて、平均月収の3〜4倍の額を稼いでいました。
しかし、昨年その仕事を辞めて、現在はオーストラリアで掃除の仕事をしているそうです。
理由はそっちの方が儲かるからです。
こうした話を聞いていると、多くのブータン人にとって何よりお金が大事になっているのではないかと感じてしまいます。
幸せの基準が変化しているブータン
インターネットの普及により、多くの情報に触れることになったブータン。
かつてブータンでは、「食べるものがあり、寝る場所があり、着る服がある。当たり前の暮らしができること」が幸せでした。
しかし、今では「幸せ=お金」という価値観を持つブータン人がたしかに増えています。
ただ、仕事を辞めてお金のためにオーストラリアに行くこと人たちのことを快く思っていないブータン人もいます。
仕事にやりがいを感じている人、家族と一緒にいる時間を大切にしている人など、経済的な豊かさだけに囚われない生き方をしているブータン人も多いです。
もちろん幸せの基準は人それぞれ。
どちらの価値観が良い悪いというものではありませんが、「世界で一番幸せ」といわれていた頃と比べると、多くのブータン国民の幸せの基準が移り変わっていきていることは間違いないでしょう。
まとめ:ゴールドラッシュのごとく豪州に渡るブータン人
オーストラリアに出稼ぎに行く、幸せの国ブータンの人たちについて解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
ここで、今回の記事の重要な点をおさらいしておきましょう。
この記事のポイント
- ブータンは国として国民の幸福に重きを置いており、かつては「世界で一番幸せな国」と呼ばれていた
- 1999年にインターネットが導入されるなどの近代化によって、ブータン人の価値観に変化が起きている
- オーストラリアに出稼ぎに行くブータン人が続出している
- オーストラリアで3年働けばブータンで家が建てられる、5年働けばブータンで一生働かずに暮らしていけるといわれている
- 「幸せ=お金」という価値観を持つブータン人が増えている一方で、経済的な豊かさに囚われない生き方をしているブータン人も多くいる
ここまで読んでいただくと、多くの人がイメージしていた幸せの国とは違った姿が見えてきたはずです。
さらなる近代化によって、ブータン人の価値観は今後どのように変化していくのでしょうか?
“幸せの国ブータンで起きている異常事態!オーストラリアに出稼ぎに行くブータン人たち。” に対して2件のコメントがあります。