ラオスのプロサッカークラブが朝練をスタートさせたときの話【2019】

ラオスのプロサッカークラブに所属していたとき、チームで朝練をはじめることになりました。時間にゆるいラオスですが、はたして早朝練習はしっかりできたのでしょうか?

ラオスのプロサッカークラブで朝練がスタート

 

2019年にラオス・プレミアリーグ(ラオス1部)でプレーしていたときのこと。

所属していたクラブでは毎日午後4時からトレーニングをしていましたが、ある期間だけ朝練も導入することになりました。

 

しかし、時間に遅れることが当たり前のラオス人

はたして朝練は無事におこなわれることができるのでしょうか。

 

そこで今回は、ラオスのプロサッカークラブが朝練をスタートさせたときの話を紹介します。

 

 

朝練を始めることになったきっかけ

 

カップ戦で優勝するために規則正しい生活をする

 

9月2週目にリーグ戦が終了し、残すは9月4週目のカップ戦の決勝のみ。

リーグ戦では最下位になってしまっただけに、カップ戦ではなんとか優勝をしたいところ。

 

そこで我がクラブの監督は、リーグ最終節からカップ戦決勝までの2週間、規則正しい生活をしてベストコンディションを作るために、朝練を始めることを決めました。

 

朝練のために早起きするということは、つまり夜ふかしをしないということ。

さらに、前日の夜にあまりお酒を飲ませないという監督の狙いがあったと思います。

 

仕事がある選手や大学に通っている選手でも来れるように、練習時間は朝6時〜7時までの1時間

とにかく、カップ戦決勝までの2週間の朝と午後の2部練習がスタートすることになりました。

 

練習場所はタート・ルアンの駐車場

 

朝練をする場所はなんとタート・ルアンの駐車場

タート・ルアンとはラオスを代表する仏塔で、首都ビエンチャンでも一二を争う観光スポットです。

 

その駐車場はとても広く、直線で1km以上あります。

ビエンチャン中の車を集めても埋まらないだろうというくらい広いです。

 

タート・ルアンの駐車場では、朝と夕方に多くの人々がランニングやウィーキング、エアロビクスに励んでいます。

そのなかに混じって、われわれもトレーニングをしました。

 

そのような場所で朝練をするのには理由があります。

  

駐車場で練習する理由

  • クラブが自前のグラウンドを持っていない
  • 財政的に余裕がない

 

毎日の練習では、ビエンチャン市内にあるソサイチくらいの広さの人工芝のコート1面を借りていました。

 

しかし、好きなだけグラウンドを借りれるほどクラブにお金はありません

そのため、試合後のリカバリーの日やフィジカルメニュー中心の日は、タート・ルアンの駐車場やチャオアヌウォン公園でトレーニングをしていました。

 

ラオスのプロサッカークラブの朝練模様

 

※これは2019年の話です。

 

朝練1日目

 

AM6:00にタート・ルアンの駐車場に集合の予定でした。

しかし、集合時間になっても僕以外の選手もスタッフもあらわれず。

 

少し待っていると選手がチラホラやってきました。

30分経って集合したのは選手が10人とスタッフが4人

ほかの選手と監督は欠席です。

 

集まった選手とスタッフでランニングをスタート。

広い駐車場とタート・ルアンの仏塔のまわりを30分ほど走ります。

 

そして、ランニングが終わったらストレッチで体をほぐし、最後にボールを使って基礎練習をおこないました。

トレーニング時間は全部で約1時間。

 

練習が終わると、クラブのおごりでみんなで朝ごはんのカオピヤック・セン(ラオス風うどん)を食べに行きました。

朝ごはんを付けることで、選手を朝練に来させようとしているのかもしれません。

 

朝練1日目

選手:10人
スタッフ:4人

 

朝練2日目

 

集合時間のAM6:00にいたのは僕だけでしたが、20分後にはその日の朝練参加者はみんな集まりました。

選手5人とスタッフ2人

前日の半分です。

 

朝練1日目の午後のトレーニングで監督は、「朝練もみんなしっかり集まってやろう」と話していました。

しかし、その監督が朝練に不参加なので選手もなかなか来ません

スタッフの数も減りました。

 

トレーニング内容は前日と一緒。

チームの中でもモチベーションの高い選手が来ているので、ランニングのピッチも少しずつ速くなります。

そして、ストレッチ、ボールを使った基礎練習で終了です。

 

朝練2日目

選手:5人
スタッフ:2人

 

朝練3日目

この日来たのは選手1人とスタッフ2人。

朝練スタートから3日目にして、選手は僕だけになってしまいました

 

とりあえず30分のランニングをスタート。

スタッフの1人が自転車に乗って後ろをついてきます。

そして、ストレッチからの個人トレーニングで終了です。

 

朝練3日目

選手:1人
スタッフ:2人

 

朝練4日目

 

集合場所でいくら待っても誰も来ず。

朝練スタートから4日目にしてついにスタッフも来なくなり、完全に自主練になってしまいました

 

ボールもなく、しかたがないので1人でランニング。

 

そろそろ終わりにするかと思っていると、スタッフ2人が登場しました。

集合時間からは1時間以上経っています。

 

彼らは到着早々に「朝ごはん食べに行くぞ」といいました。

僕に朝ごはんを食べさせるためだけに来てくれたのです。

よくわからないところで律儀なラオス人。

 

結局、朝練はこの日で最後に。

朝は各自で体を動かしておくことになりました。

 

朝練4日目

選手:1人
スタッフ:0人

 

チームに馴染むのと染まるのは違う

 

3日も続かなかった朝練

 

カップ戦決勝のために始まった朝練ですが、監督は1度も来ず。

練習自体も3日も続きませんでした。

 

結局、カップ戦の決勝も大敗。

2週間という短い期間にもかかわらず、朝練を継続することができなかったこと。

国内タイトルが掛かった試合にもかかわらず、選手のやる気が感じられたのが試合2日前からだったこと

とにかく、いろいろなことが残念でなりませんでした。

 

そして、ほかの選手たちを引っ張っていかなければならない外国人選手という立場にありながら、何もできなかった自分の未熟さも痛感しました

 

たとえ1人でもやる

 

海外数か国でプレーしてきた経験上、自分とまわりの選手のモチベーションの差にがっかりすることは少なくありません。

特に練習中は、全力で取り組まない選手もいて腹が立つことも多いです。

 

でも、それは考え方の違いなので仕方がない部分もあると思います。

 

疲れたら積極的に休む
試合で活躍すれば問題ない

 
多くの日本人とは異なる考え方です。

もちろん、試合にパフォーマンスのピークを合わせたり上手く休むことは大事です。

ただし、それを盾にしてどこかで手を抜くのは違うと思います。

 

また、目指しているところも違うんだと思います。

 

もっと高いレベルでプレーしたい
もっと良い給料を貰えるようになりたい
もっとサッカーが上手くなりたい

 

そう思っている選手は練習でも全力を出し、そう思っていない選手は試合だけ全力でやる。

 

結果がものを言う世界なので、試合だけ全力を出す選手が評価されることもあります。

それでも、たとえほかの選手が手を抜いて練習していたとしても、自分だけは全力で取り組む。

上を目指すなら、とにかく1人でもやり続けるしかないんです。

 

チームに「馴染む」ことは大切ですが、マインドまで「染まる」必要はありません。

 

規模の縮小が止まらないラオスリーグ

 

ラオスのプロサッカークラブが、朝練を始めてから終わるまでの模様を説明しましたがいかがでしたか?

 

アジアの国の1部リーグでも、まだまだこうした練習環境があります。

そして、同じリーグの選手でも、代表クラスの選手とセミプロクラスの選手では、サッカーにかける熱量や気持ちに大きな差があるのが現状です

 

また、2016年には14チームがいたラオス1部リーグも、2021年にはたったの5チームしかいなくなってしまいました。

リーグの規模がどんどん小さくなっています。

 

チーム数の減少にともない、外国人選手としての挑戦も難しくなってきたラオスリーグ。

しかし、サッカーというスポーツの可能性を考えると、なにか大きなきっかけがあればラオスリーグも息を吹き返すことができるでしょう。

 

海外へのサッカー挑戦を考えている人は、今後のラオスリーグの動向に注目しましょう!

 

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