コウノトリの看板で赤ちゃんの誕生を知らせる!オーストリアで見かけた素敵な風習を紹介!
【とにかく伝えたいこと】オーストリアでは赤ちゃんの人形をくわえたコウノトリの看板を見かけることがあります。そこには「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」という伝承にまつわる、おもしろくて素敵な風習があります。
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オーストリアのおもしろくて素敵な風習
知らなかった文化や風習に出会うことは、海外で暮らす楽しみの1つ。
その土地に住んでみて初めて知ることというものはたくさんあると思います。
オーストリアに住んでいたとき、赤ちゃんの人形が入った包みを持ったコウノトリの看板を見かけることが何度かありました。
日本では見かけたことのない看板です。
いったい何を知らせる看板なのかと調べてみると、そこにはコウノトリが訪れる国ならではの、おもしろくて素敵な風習がありました。
そこで今回は、「オーストリアで見かけるコウノトリの看板」について紹介していきます。
ヨーロッパの文化や風習に興味がある人は、ぜひ最後まで読んでみてください!
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赤ちゃんの誕生を知らせるコウノトリの看板
庭先にあるコウノトリの看板
オーストリアに住んでいたとき、コウノトリが描かれた看板が庭に立てかけてあるのを何度か見かけました。
そして、看板には赤ちゃんも一緒に描かれています。
なかには、コウノトリのくちばしの部分に赤ちゃんの人形が吊るしてあることも。
この看板には一体どんな意味があるかわかりますか?
実はこれ、「この家に赤ちゃんが生まれました」という意味の看板なんです。
コウノトリといえば「赤ちゃんを運んでくる」という言い伝えがある鳥。
そのコウノトリの看板を玄関や庭先に出すことで、赤ちゃんが無事に生まれたことを近所の人たちに報告しているんですね。
看板には赤ちゃんの名前や誕生日などが書かれています。
ちなみに上の写真の看板には、
Hurra, VALERIE ist da!
やったー、ヴァレリーだよ!
と書いてあります。
このようにして、赤ちゃんの誕生という喜びを近所の人たちと分かち合い、みんなで祝福しています。
とても素敵な風習ですね!
コウノトリの看板はほかの国でも見られる
調べてみると、コウノトリの看板を建てる風習はオーストリアだけではありませんでした。
コウノトリが繁殖地としているヨーロッパの国々では、同じようにコウノトリの看板や人形を置いて、近所の人に赤ちゃんが生まれたことを知らせるそうです。
アパートだと窓からコウノトリの人形を吊るす場合もあるとか。
この看板を見かけると、近所の人たちはお祝いの品を持っておうちを訪問するそうです。
そして、地域の人と助け合いながら子どもを育てていきます。
なぜコウノトリが赤ちゃんを運んでくるのか
なぜ「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」といわれるようになったのでしょうか。
まず、コウノトリがヨーロッパにいるのは春から夏にかけて。
その期間に卵を産み、子どもを育てます。
秋になるとアフリカに渡り冬を越す。
そして、春になるとまたヨーロッパに帰ってきます。
さて、コウノトリが赤ちゃんを運ぶという伝承は、中世のドイツで確立したと考えられています。
中世のころのドイツでは、夏至のころに結婚するのが一般的でした。
農作業がひと段落するのが夏至の時期なんだそうです!
そうすると、赤ちゃんが生まれるのは春ごろ。
コウノトリがアフリカから帰ってくる時期と、春の出産の時期が重なるわけです。
こうして、「コウノトリがくると赤ちゃんが生まれる」というイメージが着いたのではないかと考えられています。
そこから、「コウノトリが赤ちゃんを運んでくる」に変わっていったのでしょう。
伝承がどのようにして生まれたかについては、ほかにもいくつかの説があるそうです。
個人的にはこの説が一番しっくりきています!
ヨーロッパで大切にされているコウノトリ
日本とヨーロッパのコウノトリは違う種類
ここまでコウノトリと呼んできましたが、実はヨーロッパのコウノトリと日本のコウノトリは種類が違います。
ヨーロッパのコウノトリは、本当は「シュバシコウ」という名前です。
両者は羽の色はほとんど同じですが、くちばしの色が異なります。
日本のコウノトリのくちばしは黒で、シュバシコウは赤。
シュバシコウは漢字にすると「朱嘴鸛」で、赤いくちばしのコウノトリという意味になるんです。
ややこしいので、ここではすべてコウノトリと呼ぶことにします!
ちなみに、赤ちゃんを運んでくる伝承があるのはシュバシコウであって、日本のコウノトリは赤ちゃんを運んでこないそうです。
コウノトリと人は良好な関係
実は、日本を含む東アジアやロシア南東部に訪れるコウノトリは、個体数が少なく絶滅の危険があります。
一方で、ヨーロッパのコウノトリは個体数が多く絶滅の危険が低いです。
なぜならヨーロッパでは、昔からコウノトリと人は良好な関係を築いていたからです。
コウノトリは肉食なので農作物を食べることはありません。
逆に、農作物を荒らすネズミや虫を食べるため、農業の手助けになっています。
その代わりに、人々は巣作りをサポートするなどして、コウノトリを大切にしてきました。
今でも、ヨーロッパの各地でコウノトリの保護活動がおこなわれています。
また、コウノトリは赤ちゃんだけでなく、幸せも運んでくるといわれています。
そうした理由から、昔よりは少なくなって入るものの、ヨーロッパには今でもコウノトリがたくさんいるんです。
余談ですが、ヨーロッパの物語に登場するコウノトリは、たいてい性格が良いように描かれているそうです。
こうしたことからもコウノトリと人との関係の良さがわかりますね!
オーストリアのルストにはコウノトリが集まる
ハンガリーとの国境にある街・ルスト
ウィーンからバスで約2時間。
ハンガリーとの国境の街ルストには、毎年たくさんのコウノトリが訪れます。
春になるとアフリカから帰ってきたコウノトリは、ルストの街のあちこちの煙突に巣を作ります。
ルストの街では夏の終わりごろまで、コウノトリの子育ての様子を見ることができるそうです。
ルストの近くには世界遺産に登録されているノイジートラー湖があり、その周辺は野鳥の保護地区になっています。
こうした住みやすい環境があるので、コウノトリがたくさん集まってくるんです。
ルストはワインの産地としても有名なので、コウノトリを眺めながらワインを楽しむのもいいですね!
コウノトリが巣を作りやすい工夫
ルストの街ではコウノトリが煙突に巣を作る景観が観光資源にもなっています。
幸せだけでなく観光客まで呼び込んでいるんですね!
そのため、ルストではコウノトリが巣を作りやすいように、建物の煙突の作りを工夫しています。
巣を作るための台を設置したり、煙突の穴をふさいでしまわないようにしているんです。
また、オーストリアのグラーツでは、オーストリア連邦鉄道(ÖBB)がコウノトリが安全に巣を作るための塔を設置しています。
電柱や電波塔に巣を作ると、柱や塔が壊れてしまう可能性があります。
そこで、コウノトリの保護のためにもより強度の高い塔を設置したというわけです。
コウノトリは幸せと赤ちゃんを運ぶ
オーストリアで見かけた素敵な風習を紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
コウノトリの看板は赤ちゃんが生まれたことを知らせるためのものでした。
昔からあるコウノトリが赤ちゃんを運んでくるという伝承が、今でも素敵な風習となって人々の間に残っています。
僕はコウノトリの看板を見かけるだけで、幸せをおすそ分けしてもらった気分になっていました。
日本でも広まったらおもしろいですよね。
自分がまだ知らないおもしろくて素敵な風習が世界中にあると思うと、なんだかワクワクしてきませんか?
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